カカオパンデミックとこれから。
May 3, 2024
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Directed by Tateyuki Adachi |
San Francisco 特集 -後編- |
4年ぶりの「Craft Chocolate Experience 2024」の会場に来ています。 今年は、世界各地でChocolate Festivalが増え、アメリカだけでなく、ヨーロッパでも南米でも大小様々なFestivalが行われています(映画祭のようですね)。 パンデミックが終わり、人々が外に出る機会が増え旅行者数も爆発しているので、Chocolateを旅行のきっかけにと考えるのも、自然なことでしょう。 |
イベントでは、各ブランドがブースを出し、自社の商品を紹介するエリアと、各専門家がセミナーやデモンストレーションを行うコーナー、サプライヤーが出店するエリアがあります。 今回、greenはブースを出さずに、カンファレンスへの参加と、いくつかのミーティングをするために来ています。 実は今、世界中でカカオの値段が高騰し、カカオを買うことが難しくなっています。2倍3倍は当たり前の異常な状況なのです。 大手の菓子メーカーがバイヤーを世界中の農園に送り込み、農夫に現金を直接渡し交渉しています。 美味しいチョコレートを作るには、カカオ収穫後、時間と労力をかけて丁寧に発酵を行う必要がありますが、彼らはまだ発酵が行われていないカカオを、マスマーケット用にどんどんと買い占めているのです。 今までは、大手はクオリティカカオ市場には入って来なかったのですが、今のカカオ不足の状態では、どの会社もチョコレートが作れなくなってしまうので、構わず買い占めているのです。 農園は、高く買ってくれる人が現れれば、すぐにカカオを売ってしまうのだから、どうしようもありません。 |
この異常事態の原因は複雑で、いくつかの要素が重なっています。 一番の問題は、世界のカカオ生産の60%を占める、ガーナとコートジボワールの生産量が、年々減少していることです。 両国共に気候変動の影響が主な原因だと言われていますが、政府の政策も影響を与えています。生産量が減少したので、2022年後半から価格が少しずつ上がり始めます。この時点では、大手菓子メーカーは様子見で動きませんでした。23年に入り更に生産量が減ると、買い控えしていたメーカーが一気に購入に走り、価格が急騰したのです。その後も生産量は減り、価格上昇は止まらず。 焦った各メーカーは、ガーナ、コートジボワール以外の国のカカオを購入しだし、世界中のカカオを皆が一斉に買いに走り、カカオは全ての農園から消え、価格上昇も止まらない状況になっているのです。 それ以外にも、若者の農園離れ、高齢化による労働者不足や不作等が重なり、話がややこしくなっています。 今回のCraft Chocolate Experienceでも、この問題がいくつかのカンファレンスで話し合われ、農園、サプライヤー、ブランド、専門家が意見を交わしていますが、解決策は見出せていません。 ブランドとアジアマーケットの立場で意見を求められますが、僕も答えを探しているところです。 |
この、Cacao Pandemic(カカオ パンデミック)にどう対応するのか? 私達greenが持っている、手持ちのカカオも少なくなっていますが、もうカカオが無いんだとサプライヤーからは言われています。 サプライヤーもカカオを農園から購入出来なくなっているのですから、仕方ありません。 そして、これはカカオだけの問題に留まるのでしょうか? コロナが起こり、戦争が始まり、食物価格の高騰が始まっています。 仕入れ価格が上昇すれば、商品の値段が上がります。日本でも22年頃から徐々に始まった商品の値上げは、24年に入って勢いを強めています。 いつインフレになってもおかしくありません。 物が買えなくなるのか? 円安も戻らないので、我々日本人はますます苦しくなっています。外国の方々は安い日本に来て買い物をしますが、私達はどんどん買うことが出来なくなるのです。 |
目の前の問題点は ・カカオの仕入れ価格が2倍〜3倍に ・円安でさらに購入価格が上昇 ・カカオを今までのルートでは買えない ・クオリティの高いカカオが減っている 農園とダイレクトトレードを行ってきた我々も苦しい立場にあるので、カカオを専門商社から買っているブランドは先が見えていないでしょう。 しかし、残念ながらこの2日間のイベントで、日本のサプライヤーやブランドの姿を見ることはありませんでした。 たくさんの専門家と話をして、課題を乗り越えるヒントを見つけたいと思います。 |
Written by Tateyuki Adachi |
前編はこちら |
5月の季節もの 「鯉のぼりのチョコレートパイ」 |
端午の節句の鯉のぼり。 すくすく育つ子供たちへ、板チョコ入りのチョコレートパイ。 (5月5日まで、全店舗で展示します) |
質問募集中! オーナー安達に聞いてみたいことを大募集!お店や商品作りについてはもちろん、気になったことをお気軽にご質問ください。 ※全ての質問にお答えできない場合もございます。 |
読者のみなさまからいただいた質問に回答します! |
Question |
BLUE SIXのカルチャーウェブマガジンも楽しく拝読しています。 さて、オーナーの安達さんに1点質問です。 国産コーヒーの可能性や課題はどこにあると思われますか? 先日、鹿児島県の徳之島と沖永良部島を訪れ、島で栽培されたコーヒーを嗜みました。どちらの島も国産コーヒーの安定的な生産に向けて、各農家さんで試行錯誤されているようです。 日本版ゲイシャ・ショックに期待したいところですが、台風など気候面を考えると、日本がコーヒーの産地として成長していくことは難しいものでしょうか。 世界各国のコーヒー農園へ足を運び、カフェを経営されている安達さんからご覧になって、日本産コーヒーに対する見解があればお聞きしたいです。 |
Adachi's Answer |
世界各地の農園を見てきていますので、僕なりの回答をしたいと思います。 ポイントを3つ上げますね。 ・気候条件 コーヒーやカカオ生産国は、コーヒーベルトと呼ばれる熱帯、亜熱帯気候が適しています。日本の多くの地域は温帯気候なので、コーヒーノキが成長するのに適してはいません。 また、台風が多いのも問題です。 ・コスト問題 日本の多くの土地や労働力は値段が高く、コーヒーを生産するコストが非常に高くなるため、生産国との価格競争で負けてしまいます。 ・規模の問題 鹿児島や沖縄などで小規模な試みは行われていますが、限られた地域と小規模な生産では、大量生産が求められる市場ニーズに応えるのが難しいです。 今後の国産コーヒーの未来を考えると、気候変動の影響に大きく左右されるでしょう。 世界中の農園で、気候変動による収穫時期の変更が、数ヶ月単位で変わってきています。日本における気候変動の状況によっては、技術革新と合わせて可能性が出てきます。 しかし、大規模農園には生産量と価格で敵わないので、小規模でも高品質な特産品としての位置付けや、観光と連携した農園など、特定の戦略を取ることで成功の可能性はあると言えます。 |
農園の仕事は、世界中どこに行っても重労働 山道を何キロも往復するだけで、ヘトヘト それでも皆、明るく楽しく、知らない国から来た僕らを迎えてくれる 人の温かみを感じる。農園に行くのが好きな理由です Have a good weekend!! |
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