タンザニア野生動物の撮影のしかた

今回は、野生動物の撮影はどうやっているのかについて話していきます。

撮影に行くための準備は、通常6ヶ月前から始まります。長いと1〜2年かかります。

まずは、何を撮りたいのか？　どう撮りたいのか？

これに関して今回の例で説明すると、2021年にタンザニア撮影に来た時に、次作の話を撮影チームとしていました。

そこで、ヌーの大移動を狙ってみようとなり、どんな撮影方法が可能なのか？　時期はいつなのか？　そのためには何が必要なのかの見当をつけ、帰国後に準備が始まります。

ヌーは雨季に入ると移動を開始するのですが、雨だと撮影が出来ないので、その間のちょうどいい時期を見つけなくてはいけません。

撮影方法によってカメラやドローン、動画のシステムの検討に入ります。スチールと動画はどんなカメラで撮るのか、バックアップはどうするのか、最新の機材をチェックしながら充電問題の解決策を探していきます。

動画やドローンはバッテリーの消耗が早く、アフリカや南米だと夜電気が止まってしまったり、そもそも電気が来ていなかったりするのです（今回持参したバッテリーは50kg以上）。

僕らのようなインディペンデントの撮影チームでは、人数や機材をなるべくコンパクトにしておくのがとても大切。チームは3〜5人（スチールと動画2人、ドローン、マルチアシスタント）を基本に考えています。

同時に、必要な許可の申請に入ります。タンザニアのセレンゲティ国立公園は、動物を守るためのルールが厳しく、自由に撮ることは出来ません。機材、人数、時間など、全てに許可が必要になります。

まとめると
1.撮影方法と機材システム構築
2.撮影に関する許可と手続き
3.予算、スケジュール調整

ここまで準備が整うと、ロケに出発出来ます。

車には必ずライフルを持ったレンジャーに同乗してもらい、撮影車のマークを貼り、公園事務所長に挨拶をし、撮影時間の許可をもらい、政府、軍、国立公園の許可書を持って、ようやくスタート出来ます。

日の出が撮りたい時は5時からスタートしますし、夕陽なら18時半〜19時まで撮影しますが、通常は、朝のスタート時間は7時、夜は暗くなる前にホテルに入っていなければいけないので、時間外移動の許可が必要になるのです。星空を撮る場合はもちろん夜間許可をもらいに行きます。

レンズは、400mm望遠、中望遠、50mm、35mm、24mm、14mmの6種類をスチール用とドローン用で計10本、持ってきています。

ここまできたら、ようやく動物の撮影です。

1日10〜14時間、外での撮影になりますが、野生動物の場合は狙っている動物を探しながらサファリカーで移動しているか、待機している時間が90%、実際に撮っている時間は約10%。つまり1日で1時間〜1時間半程度です。

今回の撮影では、ヌーの川渡りをなんと、3度撮ることが出来ました。ガイドさん曰く、20年のガイド人生で初めてのことで奇跡的な確率だと、興奮していました！

もちろんたくさんの動物達や、素晴らしい風景まで撮ることができ、感動のロケになりました。

それも全て、事前に入念な準備をしてくれたチームのお陰です。

もちろん、これだけ準備をしても、天気が悪かったり、機材が故障したり、動物に会えないこともあります。良い作品を作るために最後に必要なピースは “運＝タイミング” なのです。

次の準備はすでに始まっています!!